今やポピュラーな言葉となったパワーハラスメント。
略してパワハラ。
それだけ身近な言葉になったのは、パワハラに悩んでいる人が多いからではないでしょうか?
私自身、今であればパワハラに該当してしまうような職場で働いてきました。
それが普通の光景であったため、何がパワハラになるのか、実はよく理解できていないのが本音です。
世代の違いによって受け止め方も違いますし、励ますつもりで厳しく言った言葉が「パワハラだ!」と言われてしまったら悲しいですよね。
より良い仕事をしていくためにも、部下や後輩などの信頼関係は重要ですし、新人を育てていくのも大事な仕事のはずです。
少し言い方を変えるだけで、印象はガラリと変わります。
あなた自身も働きやすい職場にしていくために、何がパワハラになってしまうのか、もう一度確認してみましょう。
※この記事は社会人歴10年のプロライターさんい代筆していただきました。
「パワーハラスメント」の定義
厚生労働省の発表では、職場のパワーハラスメントとは「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しました。
上記の定義を日常に当てはめてみると、下記のような行動がパワハラに該当します。
・上司や先輩と言う立場を利用して、断りにくい状況を作り出している
・業務の範囲を超えた、個人的な事項を指示している(個人での金銭の貸し借りなど)
・相手の人格を否定するような言葉を使っている
・殴る、蹴るなどの暴力を振るう
・常に怒鳴り散らしている事で、職場環境が悪くなっている
暴力を振るうのはもってのほかですが、注意したいのは言葉選びではないでしょうか。
例えば新人が失敗をして、その場を明るくしようと「アイツの失敗やばいよね!」と笑い飛ばした場合、そういう扱いに慣れていない人は本気で受け取ってしまいます。
特別扱いをする必要はありませんが、相手の性格を理解した上で、励ます言葉を選んだ方が良いでしょう。
どんな行為がパワハラになる?
それでは、具体的にどんな行為がパワハラになってしまうのか確認してみましょう。
裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づいて、大きく6つに分けられます。
1. 身体的攻撃
暴力により相手に傷つける
2. 精神的攻撃
脅迫や暴言など、相手を精神的に傷つけるような発言をする
3. 人間関係からの切り離し
仲間外れや無視をする行為、さらには必要な情報を教えないなど周囲から隔離する
4. 過大な要求
業務上関係ない事や、明らかに無理な仕事を押し付ける
5. 過小な要求
相手の能力や経験を無視した、程度の低い仕事しかやらせない
6. 個の侵害
プライベートな事に過剰に踏み入る
仕事でなくても、日常生活でされたら傷つく行為ばかりです。
どれも優位な立場を利用した「いじめに近い行為」と言えるものばかりではないでしょうか?
パワハラかどうかの判断基準
受けとめ方は人それぞれなので、暴力以外は判断が大変難しいところです。
定義に基づいて言えば、「優位な立場を利用して、相手が深く傷付くような発言や行為」をすれば立派なパワハラと言えます。
けれど、部下があり得ない大きなミスをしてしまった場合、上司が怒鳴りたくなる気持ちも理解できますよね。
そういった場合は、仕事の取り組み方を注意するなら理解できますが、「お前は、そういう性格だからダメなんだ!」と、人格否定までするような怒り方は正しいとは言えないはずです。
さらに、上司や先輩が怖くて会社に行く事すらできなくなったら、精神的攻撃によるパワハラが原因と言えます。
ほかにも、個人のお金の貸し借りを強要したり、失敗したら土下座させたりと、名誉棄損に該当するような行為もいけませんよね。
毎日のように暴言を吐いたり、ちゃんとした教育をしてあげずに仕事をしにくい環境にしてしまうのも、相手の事を考えた行為とは言えないでしょう。
相手が「これはパワハラだ!」と思ってしまうのは、お互いの信頼関係も大きく影響しているはずです。
あなたが傷付けるつもりがなくても、「仕事以外の事で、相手を深く傷つけてしまったらパワハラになる」と考えておいた方が良いでしょう。
こんな行為や言葉はパワハラになる
実際にどんな行為や言葉がパワハラに該当してしまうのでしょうか?
詳しくみていきましょう。
・過重労働を強要する
残業や休日出勤を強要し、さらには有給休暇を与えないなど、相手の了承を得ずに、長時間拘束するのも立派なパワハラです。
職場全体の業務量が多くて「みんなで頑張っていこう!」と協力し合うなら良いのですが、特定の人物にだけ強要するのはよくありません。
私も経験ありますが、上司や先輩の指示だと断りにくいのは事実です。
「これ、やっといて!」ではなく「手伝ってくれない?」と言い方を変えるだけで、相手の印象も変わるはずですよ。
・あえて相手を傷つけるような言葉を使う
「こんな事も分からないの!?」
「やる気ないなら辞めたら?」
など、ほかの言い方もできるはずなのに、相手の人格を否定したような言葉を使うのは、あまり良い事とは言えません。
ほかにも、後輩の失敗をみんなの前で笑い話にしたり、プライベートを暴露されるのも、本人にとっては気分が良いものではありませんよね。
私の職場でも、どこで情報を仕入れてきたのか分かりませんが、ある女性社員の体重を飲み会で公表して、笑い話にしている男性社員がいました。
言われた女性社員が、顔を真っ赤にしていたのを今でも覚えています。
気にする部分は人それぞれです。
仲良くなりたいからとはいえ、適度な距離を保つのは大事な事ではないでしょうか?
・飲み会や親睦会などのイベントに強制的に参加させられる
昔はよく「飲みニケーション」と言ったものですが、今はお酒の場も変化してきました。
「今日、一杯どう?」と誘って、相手がほかの予定があるのにも関わらず、強制的に参加させるのはよくありませんよね。
私としてはお酒が好きなので、苦痛に感じる事はありませんでしたが、お酒が飲めない人がいるのも事実です。
そういった人に、一緒に飲む事を強要するのは感心できる事ではありません。
さらに、勤務後のプライベートな時間を使って、遊び相手として連れ回すのも避けた方がいいでしょう。
同僚ならまだしも、私からすれば「上司や先輩との親睦会も仕事のうち」という感覚です。
「アイツは付き合いが悪い!」と判断するのではなく、仕事への姿勢で評価してあげて下さい。
パワハラ事例紹介
パワハラは相手を深く傷つけるだけでなく、裁判にまで発展し、会社までも巻き込んでしまうケースもあります。
厚生労働省が運営している「あかるい職場応援団」で、詳しい判決例が記載されています。
そこから3つご紹介します。
・日本ファンド(パワハラ)事件 東京地裁平成22年7月27日判決
参照:http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/18
消費者金融会社に勤めていた従業員3名が、上司や会社に対してパワハラによる損害賠償を請求。従業委のうち1人は、パワハラにより抑うつ状態を発症したとして、慰謝料と治療費及び休業損害も請求した。
判決では、パワハラ行為の因果関係を認め、抑うつ状態をになった原告Aについては慰謝料60万円に加えて治療費及び休業損害を、原告Bについては慰謝料40万円を、原告Cについては慰謝料10万円の支払いを、上司及び会社に命じました。
・大裕事件 大阪地裁平成26年4月11日判決
参照:http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/27
機械の製造販売をしている会社に勤めていた原告が、休職期間満了により自然退職となった。しかし、上司からパワハラを受けた事により適応障害を発症して休職したものと主張。
就労が不可能になった期間の賃金支払いと、パワハラをした上司に対して損害賠償を請求。
裁判では、原告の人格を侵害しているものと評価。
パワハラが原因で適応障害になったと認められた事により労災認定もされ、休職命令も無効であるとし、自然退職も認められないと判断されました。
・メイコウアドヴァンス事件 名古屋地裁平成26年1月15日判決
参照:http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/judicail-precedent/archives/24
金属ほうろう加工業を営む会社で働く従業員(当時52歳)が、会社役員2名から日常的に暴力やパワハラを受けた事が原因で自殺。
残された妻子が、会社と会社役員2名に対して訴訟を起こした。
判決により、暴力・パワハラ・退職強要などの違法行為が認められ、会社及び会社役員1名に対して、従業員が生きていたならば得られたであろう収入相当額の5400万円あまりの損害賠償を命じました。
上記のように、時にパワハラは人の命すら奪ってしまいます。
そして、そんな上司を放置していた会社にも責任があると認められているわけです。
パワハラという行為は継続的に行われ、相手の心を蝕んでいく場合が多いです。
「そんな事ぐらいで」と思わずに、たまには相手の立場となって考え、少し配慮してあげるだけで改善していくはずです。
そして、今あなたがパワハラを受けて悩んでいるならば、絶対に1人で抱え込まず、新たな被害者を出さないためにも、必ず誰かに相談するようにして下さいね。
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