ある日、1人の従業員が総務部にやってきて言いました。
「うつ病になったので休みます」
彼の手には医者の診断書があり、こちらに確認する事なく「休みます」宣言をしたのです。
上司もその場にいた私も、あまりにも唐突で驚いたのを今でもよく覚えています。
そのあと、彼は傷病手当金の支給も決まり、休職になりました。
今考えてみれば、当時の彼は決死の覚悟で来たのだと思います。
私自身、うつ状態になって彼の気持ちがよく分かりました。
うつ病は、見た目が健康なため理解されにくく、その辛さは体験した人でしか分からない程、毎日が苦痛に満ちています。
そんな状態で仕事をこなすのは厳しく、無理してしまうと余計に悪化してしまいます。
だからこそ、そういう病気の時こそ傷病手当金の制度を利用して欲しいのです。
あなたの給与から毎月引かれている健康保険料は、困った時に意外と頼もしい働きをしてくれます。
今まで傷病手当金を利用した事がないあなたもぜひ、この機会に確認しておきましょう。
※この記事は総務経験10年のプロライターさんに代筆していただきました。
傷病手当金とはこんな制度
傷病手当金という制度を知らない人も多い印象ですが、簡単に言うと、病気やケガで働けない状態である場合に報酬をもらえる制度です。
働けない状態と医師から認められると、大抵の会社は「休職」扱いにするはずです。
休職とは、長期間休んだとしても雇用契約が持続している状態の事をいいます。
要するに「給与は払わないけど、休んでもクビにはしないよ」という制度です。
この休職は、実は法的には定められた制度ではありません。
そのため、あなたがうつ病で休む事になっても、休職扱いしてくれるかどうかは会社によって違います。
事前に就業規則、もしくは人事部に確認しておくと良いですよ。
休職になると雇用は継続しているものの、働いていないため給料はでません。
給料が一切でない場合に、傷病手当金という制度が使えます。
そのため、有給扱いになっていたり、引継ぎで出勤した事により少しでも給与が発生すると、この制度は使えなくなってしまいます。
長い間働いていると、どうしても病気になってしまう事もあります。
うつ病も立派な病気です。
大変な闘病中であるからこそ、安心して生活できるように考えられた制度といえますね。
傷病手当金がもらえる人・もらえない人
「私も傷病手当金がもらえるのかな?」と気になりますよね。
基本的には、会社勤めの人はもらえると思っておきましょう。
細かい支給条件は下記のとおりです。
・健康保険に加入している(国民健康保険は対象外)
・休職中で会社から給与を一切もらっていない
・4日以上働ける状態ではない
なぜ4日以上なのかと言うと、仕事ができないと3日休んだあとが、報酬が支給される対象の期間になるからです。この待機している3日間が意外と重要になります。
待期3日間は、土日でも祝日でも有給でも、どんな形の休みでも構いません。
給与が支払われている状態であっても、「会社を休んだ」という事であれば該当します。
そのため「2日働いて次の日出勤した」となると、待期3日間と認められないのです。
だからこそ、4日以上休まなければいけない状態と認められる事が大切です。
このように細かい規定はありますが、うつ病の時は、そんな事は心配しなくて大丈夫です。
必要書類を渡したら、あとの手続きは会社側に任せておきましょう。
また、受給中に退職したとしても、会社の健康保険を継続して加入する場合は、そのまま残りの手当を受給する事は可能です。
ただし、それまでに1年以上健康保険に加入している事が条件です。
さらに、退職日に出勤した場合は認められず、退職日以降は支給されませんので注意して下さい。
私の周りでは退職後は継続されるより、ご家族の扶養に入る人が多かったです。
傷病手当金はどのくらいの金額がもらえる?
傷病手当金は、あくまで全国健康保険協会、もしくはあなたの会社が加入している健康保険組合から支給される手当です。
そのため残念ながら、あなたの給与と同額が支給されるわけではないのです。
計算方法は下記のとおりです。
標準報酬月額÷30日×3分の2=1日分の支給額
1日分の支給額×休んだ日数=あなたがもらえる支給金額
「標準報酬月額ってなに?」と思いますよね。
標準報酬月額とは、厚生年金や健康保険の計算をしやすくするためにできた仕組みで、あなたに支払われた給与の平均額を「標準報酬月額表」の等級区分に当てはめて決定した額になります。
基本給、手当、残業代など、ボーナスを除く全ての報酬が対象です。
なので、実はあなたの社会保険の金額は、この等級によって金額が決められているのです。
ひとまず、今あなたがもらっている月々の給与の3分の2程度がもらえると考えておいて下さい。
不安なようであれば、会社側に事前に金額を確認しておきましょう。
傷病手当金をもらえる期間
支給される期間は、最長で1年6ヶ月です。
私の経験では、大抵の人はこの期間内に復帰されるか、もしくは復帰できない状態であれば退職する場合が多いです。
なにより、会社側がずっと休職を認めてくれるとは限らないので、厳しい話ではありますが、期間内に退職を促す会社もあります。
それと、この期間にはもう1つ注意点があります。
あなたが半年休職した上で、体調も改善できたところで会社側と相談し、復帰できたとしましょう。
ところが、うつ病は再発しやすい病気でもあります。
頑張って復帰したのに、3ヶ月経った頃、また働ける状態ではなくなってしまいました。
また同じうつ病で休職扱いになったとします。
すると、その期間もこの1年6ヶ月内として扱われてしまうので、先に半年休んだ期間を除いた残りが支給される対象の期間になります。
1年6ヶ月以内に、何度も復帰と休職を繰り返す場合は注意しておきましょう。
傷病手当金を確実に受給するためには
「最近、なんだかおかしい・・・」
自分の体に異変を感じて、家族の勧めもあり、あなたは勇気をもって病院へ行きました。
そして医者から「あなたはうつ病です。重症ですので会社を休んだ方が良いでしょう」と言われます。
あなたが要望する必要もなく、医者は診断書を書いてくれるはずです。
その診断書を持って、まずは上司に相談しましょう。
上司が言いづらいのであれば人事や総務でも大丈夫ですし、最初は電話でも構いません。
早めに相談するようにしてみて下さい。
会社側と相談した上で、あなたの休職が認められました。
そうすると、傷病手当金の申請書を渡されるはずです。
医者のサインと捺印も必要です。
あなた自身がしっかりと記入した上で、担当医にも書いてもらうようにしましょう。
申請書を提出したら、あとは会社側が全て手続きをしてくれます。
ちなみに、傷病手当金の申請書は全国健康保険協会の公式HPからでも印刷できます。
さらには代理人に委任する事も可能です。
あなた自身が手続きするのが難しい場合は、家族にお願いするのも1つの方法です。
傷病手当金を確実に受給するためにも、早めに提出するようにしましょう。
ただでさえ、うつ病になると大変です。
仕事の心配もありますが、なによりお金の心配が尽きませんよね。
少しでも安心して休めるように、該当する場合は必ず手続きをしておきましょう。
そして、しっかりと心と体を休めて、少しでも笑顔になれる日を増やしてみて下さいね。
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